パブリッククラウドとプライベートクラウドの仮想化プラットフォームは規模やサーバ装置のグレード等を除けば、なんらかわることはありません。パブリック・クラウドを一社で閉鎖的に独り占めすればプライベートクラウドに、また、プライベートクラウドを一般顧客に貸し出せばパブリッククラウドになります。
クラウドの仮想化プラットフォームの構造
クラウドの基盤となる仮想化プラットフォームはおおむね図のような構造で構築されます。
ストレージ
ストレージ・サーバ
仮想ホストのディスクドライブのイメージが収容されます。仮想ホストのドライブ装置です。代表的な仮想化プラットフォーム製品では、NFS, iSCSI, SANなどが利用可能です。「ストレージサーバが故障した」というのは「パソコンのディスクが壊れた」というのと全く同じ状態です。クラスター化などで耐障害性を強化することができます。
ストレージ・ネットワーク
おおむねストレージ・サーバに使う装置の種類や都合で決まりますが、高速・高バンドワイズで高負荷や部分障害にも耐えるネットワークが期待されます。パブリッククラウドの黎明期に特殊なSANを使用した結果、逆に高負荷時に縮退動作が災いして長期のサービス停止を余儀なくされた例があいつぎました。一部のベンダーは、イーサーネットのボンディング(複数の回線を束ねてバンドワイズを拡張する技術)でNFSサーバを接続するオーソドックスな方法に変更しました。プライベートクラウドについて私たちも全く同意見です。
ハイパヴァイザー・ノード
ストレージに収容されている各仮想ホストのディスクイメージをもとに、仮想ホストが「物理的」に実行されるサーバです。Ovirtの場合、(1)Ovirtノードと呼ばれる専用にカスタマイズされたLinuxベースのOSを実装したサーバか、KVMとVDSMをインストールしたLinuxサーバを使います。仮想ホストにメモリー、CPU、周辺デヴァイス等、PCとして動作するのに必要な物理資源を提供します。実装されているCPUコアの数とメモリーが多いほど、たくさんの仮想ホストを実行することができます。
ハイパヴァイザー利用を意識したチップあたりのコア数の多い(例:8コア/ソケット x2)CPUを搭載したサーバも見かけますが、フロントサイド・バスのバンドワイズ等は変わらないので、一般に1コアあたりの処理能力が低くなる傾向を感じます。プライベートクラウドでの利用を前提にすると、8コア(4コア/ソケットx2)あたりのサーバが3台もあれば、耐障害性もぐっと協力になりますし、たいていの社内システムのリプレースは可能です。
クラウド管理サーバ
各種ストレージ、ハイパヴァイザー・ノード、マイグレーション、仮想ホスト、スナップショットやExport/Import等、仮想化プラットフォームの設定と監視のすべてを担当するサーバです。Ovirtでは、Ovirt EngineとよばれるJava(J2EE)で作られたサーバサービスを実装したLinuxサーバがこれに相当します。
Ovirt Engineは、RedHat社RHEVのコミュニティ製品として商用パブリック・クラウドに利用可能な機能をすべて備えた仮想化プラットフォームです。パブリック・クラウド同様にシステム管理者と利用者向けにそれぞれについて設定可能な権限に従い異なるユーザ・インタフェイスを提供する、コンプリートな仮想化プラットフォームです。